1854年。エレベータの発明は、都市生活者の生活を一変させました。それから160年、その技術はほとんど変わりませんでした。1本の筒の中を1台のかごが往復するだけの乗り物。2003年、ようやく2台のキャビンが一つの筒の中を上下する「ツインエレベータ」が現れましたが、人々はますます大都市に集中し、都市の建築と人の移動手段は、さらなる革命を求められています。
ビルが高層化され、利用者が増えれば増えるほど、多くのエレベータを設置しなくてはなりません。ビルの中でエレベータ昇降路が占める容積は増すばかりです。
そこで我々はエレベータの設計を根本から考え直すことにしました。エレベータからワイヤをなくすことができたら? 屋上の巻き上げ機ではなく、キャビン自体に駆動部を内蔵したら? 複数のキャビンが、一本の筒の中でいくつも同時に運行できたら? キャビンを次々に循環させたら? 上下だけでなく水平にも移動できたら?
ワイヤのないエレベータ。それはまた、ワイヤ自身の重みと強度の制限からも自由になること。建物がどんなに高くても、どこまでも上っていくことができます。もはや高層ビルの途中階でエレベータを乗り継ぐ必要はありません。
そのキャビンは上下だけでなく横にも移動できます。高さ、間取り、移動方向、全ての縛りから、都市の設計が解き放たれます。地下鉄の駅から隣接するビルの高層階へ直接、人々を運ぶことさえ可能になります。
その先にはまさに “マルチ” な可能性が、無限に広がっています。「マルチ」。そう、それが私たちティッセンクルップ*1が拓いた、革新のエレベータの名前です。
*1: 「ティッセンクルップ」は記事掲載当時の旧社名です。