
腰痛やひざ痛で階段がつらい、障がいやご高齢のために親族の介助が必要、そのような時にご家族だけで上り下りをサポートするのは大変。何か機械の助けを借りることはできないものか・・・と思案したものの、ホームエレベーターを取り付けられるような間取りではないし費用もかかりそう・・・。
そのような時、思いつく解決策は何でしょう? 皆さんはネットでどのように検索されるのでしょうか?
「椅子が電動で階段をのぼるアレ」「階段を椅子ごと昇降する機械」「家庭用のエスカレーター」・・・その機械の名前は「階段昇降機」(階段リフト)です。
本記事では、設置不要で手軽な「可搬型」と、安全性・操作性に優れた「いす式」の違いや費用面を比較し、それぞれのメリット・デメリットを整理。ご家庭に合った選び方をわかりやすく解説します。
階段昇降機の主な種類
階段昇降機にはいくつかのタイプがあり、利用者の身体状況や階段の形状、設置場所によって適した機種が異なります。
代表的な階段昇降機の種類とその違いをご紹介しましょう。
| 種類 | 特徴 | 設置工事 | 介助者のサポート |
|---|---|---|---|
| 可搬型階段昇降機 | 階段への設置工事など不要で、介助者が操作して階段を昇り降りするタイプの階段昇降機 | 不要 | 必須 |
| いす式階段昇降機 | 階段にレールを設置し、レールに取り付けた椅子が昇り降りするタイプの階段昇降機 | 必要 | 一人でも利用可 |
| 車椅子用階段昇降機 | 階段にレールを設置し、車椅子ごと乗れる台座がレールを昇り降りするタイプの階段昇降機。広めの設置スペースが必要なため、住宅より公共設備向け | 必要 | 一人でも利用可 |
一般住宅用として『いす式階段昇降機』がオーソドックスですが、最近はネット検索すると画像付きで可搬型の階段昇降機が出てくることも多くなりました。
次の章では、「可搬型階段昇降機」と「いす式階段昇降機」について、さらに詳しくご説明しましょう。
ネット検索に画像付きでよく出る“可搬型階段昇降機”とは

階段昇降台車
可搬型階段昇降機とは、キャタピラや特殊な車輪を備えた台車で階段を昇降する機器です。もともとは、エレベーターのない施設で荷物を運ぶために開発された「階段昇降台車」が原型で、これを人が安全に乗れるよう改良して、介助用の可搬型階段昇降機ができました。
車椅子を固定して運ぶタイプと、いすと一体型になったタイプがあり、いずれも利用者が単独で操作することはできません。必ず介助者が操作レバーを支えて運転する必要があり、使用には一定の技術と体力が求められます。
可搬型階段昇降機のメリット:手軽さが魅力
可搬型階段昇降機には、以下のようなメリットがあります。
(1)安価で導入しやすい~レンタルあり&介護保険適用:
設置工事が不要なため、初期費用を大幅に抑えられます。購入だけでなくレンタルも可能で、短期間の利用や試用にも適しています。介護保険が適用される場合、自己負担額を1~3割に抑えることができます。
(2)工事不要で設置が簡単:
階段にレールを取り付ける必要がないため、階段にネジ穴をあける必要がなく、持ち運びも可能です。賃貸住宅や一時的な利用にも適しており、必要なときに階段にセットするだけで使用できます。
(3)多用途に対応:
屋内外問わず使用できるため、外出先や施設での利用にも便利です。車椅子を固定して運搬するタイプや、いす一体型のタイプなど、用途に応じた選択肢があります。
可搬型階段昇降機のデメリット
一方で、可搬型階段昇降機には以下のようなデメリットもあります。
(1)介助者が常に必要:
利用者が一人で操作することはできず、介助者の都合に左右される場面が出てきます。
(2)操作には力とコツが必要~老々介護や小柄な介助者には不向き~:
介助者が操作する必要があり、一定の力や技術が求められます。特に高齢の介助者にとっては負担が大きくなる場合があります。
高齢の介助者が操作する場合、身体的な負担が大きく、現実的ではないケースも少なくありません。体格制限もあります。体長150㎝以下や体重50㎏以下の介助者は使えないケースも。
(3)安全な利用には講習が必須:
誤操作による事故を防ぐため、専門業者による講習を受ける必要があります。講習を受けた認定者のみが操作可能です。ヘルパーさんが迎えに来る、その時にヘルパーさんに対応してもらうのも、ヘルパーさんが講習を受けている必要があります。
(4)階段の形状によっては利用困難:
急な曲がり階段など、踏み板の幅に狭い箇所があったり壁が近すぎたりして、階段の形状や踊り場の狭さによっては使用できない場合があります。
こんな方には可搬型をおすすめできません
介助者の身体能力に不安がある方、1階2階の行き来が頻繁、安全性を最優先したい方、その場合はいす式の階段昇降機がおすすめです。
可搬型階段昇降機は階段の形状によっては、操作しても曲がれないなんてことも。実際に弊社へご相談のあった方の事例もご覧ください。

逆に玄関外の小階段や直線階段なら便利かもしれません。例えば1週間に1回だけデイサービスに出かける時に玄関の小階段で使う程度なら導入を検討してもよいでしょう。
定番の“いす式階段昇降機”とは

いす式階段昇降機とは、階段に設置したレールの上をいすが電動で昇降する機器です。利用者はいすに座ったまま、安全かつ快適に階段を移動できるため、転倒リスクの軽減に役立ちます。操作はレバーを倒すだけの簡単設計で、介助者の力を借りずに一人で使用可能です。
ホームエレベーターの設置が難しい住宅でも、既存の階段にレールを取り付けるだけで導入できるため、大規模な改修は不要。直線階段はもちろん、曲がった階段や屋外階段にも対応でき、バリアフリー化を実現します。高齢者や身体に障害のある方の生活の質を高める設備として注目されています。
いす式階段昇降機のメリット:安全性と利便性を重視するならこちら
可搬型階段昇降機が合わないと感じた場合、いす式階段昇降機が有力な選択肢となります。
(1)介助不要で安全に昇降:
いす式階段昇降機は、利用者が自分で操作できるため、介助者の負担がありません。階段に沿って設置されたレール上を移動するため、安定性が高く、ひじ掛けとシートベルトで転落のリスクも軽減されます。
(2)操作が簡単で誰でも使える:
シンプルな操作で、誰でも簡単に利用可能です。リモコン操作ができる製品もあり、利便性が高いのが特徴です。
(3)日常的に利用するなら費用対効果が高い:
初期費用は可搬型に比べて高いものの、介助者の負担軽減や利用の自由度を考慮すると、総合的には費用対効果が高いと言えます。
(4)多様な階段に設置可能:
階段の形状(直線、曲線)や屋外・屋内の両方に対応した製品があり、多くの家庭の階段に設置できます。
いす式階段昇降機のデメリット
一方でいす式階段昇降機には以下のようなデメリットがあります。
(1)設置工事が必要:
階段にレールを固定する工事が必須です。階段の形状に合わせたレールの製造には時間がかかるので、契約してから設置まで1か月以上かかります。
(2)費用が高額:
機器本体に加えて、設置工事費がかかります。介護保険の「特定福祉用具販売」や「住宅改修」の対象外となるため、費用は原則として全額自己負担です。ただし、自治体によっては独自の補助金制度がある場合があります。
(3)階段が狭くなる:
階段にレールやいすを設置するため、階段の幅が狭くなり、他の家族の通行の妨げになることがあります。利用しない時は座面やひじ掛けを折りたたんでおく必要があります。
こんな方にはいす式階段昇降機がおすすめ
以下のような方には、いす式階段昇降機が特におすすめです。
- 介助者の負担を減らしたい方:介助者が不要なため、家族の負担を軽減できます。
- 安全性を最優先したい方:転倒や転落のリスクを最小限に抑えたい場合に最適です。
- 毎日頻繁に利用する方:操作が簡単で、利用者が自由に昇降できるため、日常的な使用に適しています。
いす式を含めた階段昇降機全般の詳しいコラムについては以下をご確認ください。

可搬型といす式の費用面の比較:導入費用だけで判断しない
階段昇降機の導入には、初期費用や介護保険の適用可否など、経済的な側面も重要な判断材料となります。
可搬型階段昇降機は、初期費用が比較的安く、レンタルも可能なうえ、介護保険の適用対象のため導入費用をぐっと抑えることができます。ただし、日常的に複数回利用することを踏まえると、介助者の労力もかなりのものになります。
一方、いす式階段昇降機は設置工事が必要でレンタル不可ですが、毎日の昇降を安全にサポートする利便性を考慮すると、日常的に使用する場合、費用対効果に優れるケースもあります。
使用する頻度を踏まえて導入費用以外の要素も踏まえて検討するとよいでしょう。
車椅子ごと運べる“車椅子用階段昇降機”

最後に車いす用階段昇降機についても簡単にご紹介します。車椅子用(斜行型)階段昇降機は、車椅子に乗ったまま階段を昇降できるタイプで、プラットフォーム(台)に車椅子を乗せて移動します。
車椅子用階段昇降機のメリット
(1)車椅子からの乗り降りが不要:
車椅子に乗ったまま移動できるため、階段の昇降のたびに車椅子から昇降機への移乗(乗り降り)をする必要がありません。
(2)車椅子を運ぶ必要がない:
車椅子ごと移動するため、階段昇降機を利用して上ったフロアに別の車椅子がない場合に介助者が車椅子を抱えて階段を移動する労力が不要になります。
車椅子用階段昇降機のデメリット
広い設置スペースが必要:
車椅子を乗せるプラットフォームが大きいため、階段の幅が広くないと設置ができません。曲がり階段の場合はさらに広い旋回スペースが必要になります。乗り降りのスペースも確保する必要があります。
(1)高額な費用:
いす式に比べて本体価格が高く、設置工事も大がかりになるため、総費用が高額です。
(2)住宅の改築が必要:設置のための強度やスペースを確保するため、建物を改築する必要が生じる場合があります。
まとめ:ご家庭に合った階段昇降機を選ぶために
可搬型階段昇降機は、その手軽さから魅力的な選択肢に見えますが、介助者の負担や操作の習熟度、利用頻度などを考慮すると、すべてのご家庭に最適とは限りません。
一方で、いす式階段昇降機は、介助者の負担を軽減し、安全性や利便性を重視する方にとって理想的な選択肢です。
階段昇降機選びで後悔しないためには、まずは専門業者に相談し、実際に製品を見たり試乗したりすることをおすすめします。ぜひ、ご家庭にぴったりの階段昇降機を見つけてください。



