調査*1によると、「介護が必要になった主な原因」のトップは「認知症」
第二位の原因が「フレイル」だそうです。
*1平成28年国民生活基礎調査(厚生労働省)より
75歳以上の要介護になる原因のトップはもちろん認知症ですが、それに続いて第二位の原因が「フレイル」です。 骨折や転倒などのはっきりした事故よりも多いのです。
「フレイル」とは
「フレイル」とは「加齢により心身が老い衰えた状態」を言うそうです。
しかしなぜ「老衰」とか「衰弱」といわずに、「フレイル」などというカタカナ文字を使っているのでしょうか?
それには理由があります。
重要なポイントは、「フレイルは戻れる!」(可逆性)という点です。
「加齢により老い衰えた」と言ってしまうと、もう後戻り出来ないような印象を受けますが、「フレイル」には
「しかるべき介入により再び健常状態に戻るという可逆性が包含されている」(日本老年医学会)
という意味があります。
つまり、対処のしかたひとつで、フレイルは改善できるのです。
「フレイル」は筋力低下だけをいうのではない
フレイルは、筋力低下だけでなく、身体的機能、精神的・心理的機能、社会的機能など広い意味を含んでいます。
身体的機能の問題
- 筋力の低下(立ったり座ったりが大変・重いものが持てない)
- バランス能力(ふらつく・転ぶ・杖がいる)
- 持久力(長いこと歩けない・上り下りで息が切れる)
- 痛み(膝や腰が痛む)・よく見えない・耳がとおい
精神的・心理的問題
- 認知障害
- うつ
- 人と会う意欲がない
- 出歩くのが怖い
社交的問題
- 閉じこもり
- 孤食
- 出かける理由がない
- 家族の負担になる
これらの問題は、単独ではなく相互に関係しています。
- 筋肉の減少・筋力の低下(医学的な呼び方は「サルコペニア」)
に加え、
- バランス能力の低下
などが原因でちょっとした事故(転倒など)になることがあります。
そうすると、「転ぶかもしれない」「家族に迷惑をかける」などの不安・恐怖から、「運動しなくなる」「外出しなくなる」「部屋にひきこもりがちになる」という傾向になりがちです。
それが運動不足からさらに筋力の低下を招きます。
つまり、フレイルは悪循環におちいりやすいのです。
筋力・持久力の低下や、ひざ痛・腰痛・息切れなどの身体症状は、加齢と共にある程度はしょうがないことです。しかし、それが「運動しなくなる」「外出しなくなる」「部屋にひきこもりがちになる」という傾向につながると、たちまち要介護へと進んでしまうことになります。
階段は自力で上り下りした方が運動になるのでは?
よく言われることですが、まだ歩けるのに階段昇降機を設置すると運動不足になるのでは? という懸念があります。
しかし、実際は逆なのです。
階段は家の中で一番危険な場所です。 膝や腰に痛みがあったり、バランス能力に不安がある方は、どうしても階段の上り下りを避けようとします。
そして、外出を控えたり、部屋でテレビばかりをみていたり、食事を自室まで運んでもらったりしがちです。
階段昇降機を設置して、一番危ない(怖い)階段の危険を取り除いてあげることで、
- 自発的に動こうとする(家族の世話にならなくても動ける)
- 出かける気力がでる
このようなポジティブな変化が期待できます。
それが・・・
フレイルのループ(悪循環)を断ち切り、以前の健康な状態に少しずつ戻していくことに役立つのです。